ChatGPTと会話していると、「え、前にも言ったこと覚えてる?」と思う瞬間があります。 質問の文脈を踏まえた応答や、前提を省略しても成立するやりとり……。
まるで人間と話しているかのような“会話の一貫性”に、不思議さを感じたことはありませんか?
しかし、以前の記事でも紹介したように、ChatGPTは「基本的に新たに記憶しない脳」で動いています。 ではなぜ、まるで覚えているかのように見えるのでしょうか?
一時的な“短期記憶”で文脈をたどる
まず大前提として、ChatGPTは「今の会話セッション内の履歴」を一時的に参照しています。
この“短期記憶”のような仕組みがあるおかげで、
- 文脈を踏まえた自然な返答
- 直前の質問へのフォローアップ
- 主語や目的語が抜けた発言にも対応
といった、人間らしいやりとりが可能になるのです。
ただしこれはセッションをまたぐと消えてしまう、あくまで“一時的な記憶”です。
「覚えているように見える」その正体は?
では、なぜここまで自然に会話がつながるのでしょうか?
その理由は、ChatGPTが以下のような仕組みで動いているからです。
- 入力された文章をトークン(単語のかけら)に分解し、
- 直前の会話の流れを踏まえた「もっともありそうな返答」を確率で予測し、
- それを一語ずつ、順番につなげていく
つまり、ChatGPTは「過去の話の意味を理解して応答している」わけではありません。
文脈を参照した“確率的な予測”の積み重ねによって、まるで覚えているかのような返答が生成されているだけなのです。
そのため、直前の会話の“意味”を考えたら明らかにズレた返答が返ってくることも、時々あります。
見た目は自然でも、実は“なんとなくそれっぽい”を積み重ねただけなのです。
“長期記憶”って本当にないの?
実は、ChatGPTには一部ユーザーのスタイルや好みを記憶する「メモリ機能」が搭載されています。
以前は有料プラン限定の機能でしたが、現在では無料プランでも一部利用できるようです。 (ただし、ユーザーが手動でON/OFFを切り替え可能であり、すべての発言内容が記録されるわけではありません。)
このメモリ機能には、次のような特徴があります:
- ユーザーの好みや傾向を長期的に保存できる
- 新しいチャットに移動しても、それらの情報を保持している
- 明示的に通知され、いつでも編集・削除が可能
つまり、これは正しく“記憶”と呼べる仕組みです。
とはいえ、ここでいう記憶とは、あくまで「一時的な会話履歴を保存しておく仕組みが長期化しただけ」。
ChatGPTが“記憶の意味”を理解して使い分けているわけではありません。
予測のための材料として記録を参照しているにすぎないのです。
まとめ
ChatGPTの会話の一貫性は、高度な予測の結果です。 文脈を踏まえているように感じるのは、そう見えるように設計されているからです。 たとえメモリ機能を使っている場合でも、基本的な仕組みは変わりません。
これを知っているかどうかでChatGPTへの質問の仕方や回答の受け止め方も変わってきますよね。
最後に:AIのしくみを知って、もっと楽しく使いこなそう
ChatGPTと会話していると、まるで意味を理解しているかのような自然な受け答えに、
「本当に人間みたいだな」と感じることがあると思います。
その姿から、とても万能な存在のように思えてしまうこともあるでしょう。
でも実際には、そう見えるように設計されているだけで、本当の意味で理解しているわけではない。
今回の学びを通して、そのような仕組みが少しずつ見えてきたのではないでしょうか。
これで「ChatGPTの構造理解シリーズ」は一旦の締めくくりです。
次回からは、AIと人間の違いに焦点を当てる新シリーズが始まります。どうぞお楽しみに!
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